経営者の資産三分法|金融資産・自社株・不動産のバランス戦略とは?

「利益は出ているのに、お金が手元に残らない…」
「事業が順調でも、将来の資産形成に不安がある…」
こうした悩みを持つ中小企業経営者や法人オーナーは少なくありません。
会社経営はもちろん大切ですが、それと同じくらい重要なのが**“経営者個人の資産形成”**です。
そして、その資産形成を安定的・長期的に成功させるカギとなる考え方が、今回ご紹介する【資産三分法】です。
資産三分法とは?
資産三分法とは、経営者が自身の資産を以下の3つに分けて、偏りすぎず、バランスよく保有する戦略的な考え方です。
- ① 金融資産(預金、株式、投資信託、保険など)
- ② 自社株(自社の事業資産)
- ③ 不動産(収益物件、自宅、事業用不動産など)
この3つの資産は、リスク・リターン・流動性・税務メリットがそれぞれ異なります。バランスよく分散して保有することで、事業リスク・市場変動・老後資金など、あらゆる場面に備えることができます。

① 金融資産|流動性と分散性が魅力
金融資産とは、預金、株式、投資信託、債券、保険商品など、すぐに現金化しやすい資産のことです。
▼メリット
流動性が高く、キャッシュフロー対策に有効
分散投資がしやすく、市場変動に柔軟に対応できる
経営と切り離して個人資産として管理しやすい
経営者は、会社の資金と個人資産が混在しやすいため、意識的に“個人の資産口座”を確保することが重要です。
▼注意点
- 預金だけではインフレで実質価値が目減りするリスクも。
- 運用知識がないと、リターンが限定されてしまうことも。
🔍 ポイント:
法人保険や退職金準備なども、法人から個人への金融資産移転として非常に効果的です。
② 自社株|成長のリターンを享受できる“攻め”の資産
多くの経営者にとって最大の資産が、「自社の株式」です。自社の業績向上=株価の上昇に直結するため、最も高いリターンが期待できます。
▼メリット
- 自分の経営次第で価値を高められる唯一の資産
- 事業承継や相続対策における工夫の余地が大きい
- 役員報酬や配当などによる収益化も可能
とくに中小企業経営者にとっては、「自社株対策(評価引き下げ)」が、相続・贈与・M&Aにおける重要テーマになります。
▼注意点
- 流動性がないため、現金化には時間や工夫が必要。
- 業績悪化により、資産価値が大きく毀損する可能性も。
🔍 ポイント:
「自社株=資産」だと認識し、保有割合・評価額・承継計画を明確にしておくことが重要です。
③ 不動産|安定収入と節税効果を兼ね備えた資産
不動産は、収益を生みながら資産としての価値も残りやすく、「守りと攻め」を両立した資産です。
▼メリット
- 家賃収入という安定収益が得られる
- 減価償却による節税効果
- 相続対策や法人経費計上による活用が可能
経営者の中には、法人名義で社宅を保有する、自宅を法人に貸すことで資産移転するなど、さまざまな不動産戦略を取り入れる方も増えています。
▼注意点
- 初期投資が大きく、資金が拘束されやすい。
- 空室リスク・修繕費・固定資産税などコストも発生。
🔍 ポイント:
法人と個人、どちらで保有するかの「名義戦略」で、税務効果は大きく変わります。
なぜ三分法が重要なのか?
すべてを金融資産にしておくと、インフレや金利上昇に弱くなりがちです。
自社株に偏ると、事業リスクが直撃し、老後資金が不安定になります。
不動産だけに偏ると、現金化できない「資産貧乏」になりやすくなります。
だからこそ、3つの資産をバランスよく組み合わせて持つことが、経営者の「人生と事業の安心」をつくるのです。
資産三分法の設計は、経営者一人ひとりで変わる
どの資産をどれだけ持つかは、以下のような要素で変わってきます。
- 年齢とライフステージ
- 会社の業績・資金繰りの状況
- 役員報酬や家族構成
- 今後の事業承継・引退の意向
一人ひとりの状況に合わせて資産配分を設計することで、手取りを増やしながら資産を守る戦略的マネープランが可能になります。
【まとめ】経営者こそ、資産の「質とバランス」にこだわろう
事業が伸びているときこそ、資産形成のチャンスです。
逆に、何もしなければ、会社の利益は税金や社会保険料で目減りし、個人の手元にはほとんど残らない…という事態にもなりかねません。
経営者に必要なのは、収入を最大化し、手元に残し、将来につなぐ資産設計。
その第一歩として、「資産三分法」の考え方を、自社とご自身に取り入れてみてください。